番外短編小説二




樟静が微雅内の戦闘に巻き込まれ怪我をした。
抄基は歳長としてその情報を聞きつけると、すぐに巻き込んだ者に厳重注意をして樟静の元へ向かった。
樟静は既に同様の情報を得ていた恋に、部屋で手当てを受けていた。
抄基は恋の部屋に着くと、その二人をじっと見ていた。
恋 「……樟静大丈夫?」
樟静「はい、お気遣い有難うございます」
恋 「ごめんね、本当は私が手当てするより、
   部屋に戻って下人の治療専門の人にみてもらったほうがいいのに」
樟静「いいえ。恋さんはとてもお上手です。
   とても優しくて、安心します」
恋 「ありがと。そう言ってもらえると嬉しい。
   ……で?啓魄、何か用があって来たんじゃないの?
   そんな睨まないで早く用件を言って」
 恋は先ほどから黙ったままこちらを見ている抄基に少し冷たく言った。
 抄基はふっと二人から一度視線をはずして、少し迷ってからまた戻した。
抄基「……取り込み中のようだったから待ってただけだ。
   ……圭」
樟静「はい?」
抄基「怪我……悪かった」
樟静「何故抄基が謝るのです」
抄基「圭を巻き込んだのは十二歳、俺が長をしている歳の者達だからだ」
樟静「それで、何なのです?」
抄基「もう下人を巻き込むことが無いようにと厳重注意しておいた」
樟静「歳長らしい冷静な行動ですね」
抄基「……」
樟静「それでは歳長さん、わざわざご連絡有難うございました。
   もう気にしていませんので、お戻りになれれて結構ですよ」
抄基「……いや」
樟静「まだ何か……それとも恋さんに御用ですか?
   それなら、私はいつでも退室するのでおっしゃってください」
抄基「そうじゃない。……恋」
恋 「なっ何?」
抄基「圭の怪我の具合はどうだ?」
 その言葉を聞いて、恋はくすくすと笑い出した。
恋 「そんなの本人に直接聞けばいいでしょ」
抄基「どうぜ圭のことだ。深手を負っていても大丈夫としか言わないだろ」
恋 「なるほど。確かに」
樟静「お二人とも、私の言う事がそんなに信じられないのですか」
抄基「……それじゃあ、圭は恋の言う事信じるのか?」
恋 「何で私の話になるの!」
樟静「……確かに。信じられませんね。抄基の考えている事が分かりました。
   でもそうなると」
抄基「なんだ?」
樟静「抄基が私の心配をしているということになってしまいますが、よろしいのですか?」
抄基「……心配しなはずがないだろう?」
樟静「案外素直なんですね」
抄基「隠す理由がない」
恋 「じゃあ此処きてすぐに言えばよかったのに」
抄基「下手な手当てを邪魔してさらに悪化させたほうがよかったのか?」
恋 「なっ下手?」
抄基「冗談だ」
いつのまにか部屋内の緊張感は緩み、暖かい空気が流れる。
どうやら、抄基が過剰な責任を感じることは回避できたようだ
と、樟静はいつものように優しく笑いながら思った。


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