微雅
第一章〜死舞〜
第七話
「ハァ……ハァっ……ハァ」
監督者が静かに二人の所へ近づいた。
「それまで。皆さん動かないで下さい」
実際は二十一歳長が言うまでも無く、皆の動きは止まり音を立てる者はいなかった。
「……十二歳長抄基、近くにいますね?」
「はい」
「この者の申請は」
「していません」
「そうですか。この傷です、ほっておけばすぐに息絶えるでしょう。
十二歳の皆さん、この者を下人へと考える方はいませんか?
……そうですか、では。周伯 航里を今回の死舞の死亡者とします。
抄基、後は任せましたよ」
「はい、お疲れ様でした」
二十一歳長が去っていくと、一人二人と話し声が聞こえてきた。
ざわめきが少しずつ大きくなる。
「黙れ!まだ終わっていないだろ。下人の担当の者は周伯の片付けを。
他の者は怪我人の手当てを頼む。歳の者は解散だ。」
抄基の言葉を聞いて歳の者は皆部屋など、それぞれの場所に移動していった。
その際、恋に近づこうとする者は誰一人としていない。
抄基は両手を地について座り込んで動こうとしない恋のもとへ近づいていった。
「おい、大丈夫か」
「……」
「死舞でお前が殺したのは六人目か。今回も一瞬で決まったな」
「……」
「あっ傷が開いてるじゃねぇか、誰か下人……圭 樟静!」
「あ、抄基様」
「この前の傷が開いたらしい。俺が部屋に運ぶから手当てを頼む」
「はい、承知しました」
抄基は戦の時と同じように恋を部屋まで負ぶっていった。
ただ違うとすれば表情が少し暗い事くらいだ。
抄基は部屋に着くと、あとはまかせたと樟静を残し、一人部屋を出て行った。
「あれが朱臣 恋か」
十二歳心央がよく見える屋根の上に二つの影。
二人とも式服らしい白い着物を着ていて、
頭からも同じ白い布をかぶっているので顔は見えない。
「藍卯! 何しに来たのー?」
「別に。様子を見てくるように言われただけだ」
「相も変わらず真面目だねぇ」
「……様子はどうだ?」
「この一週間の間だけでもすごくおもしろいものが見れたよー。
戦ではかなりやられてたけど、そのあとがすごいの!
戸と壁の2oくらいの隙間に向かってペラペラの紙を2mくらいはなれた所から投げて通しちゃったし、
ふっかーい傷負わされても声もださなかったし。
それになんといってもさっきの死舞だね」
「そういえば、また最下位だったと聞いたが」
「大丈夫ちゃんと生きてるよ。死舞を終わらせたのもあの子だし。
もちろん、阻人(下人)にならずに」
「……」
「それも相手は歳副長。あっ前の、ね。
誰もあの子が今日こそ阻人になると確信した瞬間、突然動きが速くなって一発で決めちゃった。
心臓一突きってとこかな」
「それで、破斬(はどう思うんだ?この件に関して」
「あの子毎日二時頃まで勉強してるみたいだよ。つまり頑張り屋さんってこと。
今たとえ弱くても十分やっていけると思うから、賛成かな。
なにより根性ありそうだし……藍卯は?」
「そうだな、今の話を聞いたところでは賛成、してもいい」
「じゃ、決まりだね。執行長(さん達の提案だし、ね」