血を欲す

「焔李ってさぁ、血綺麗だよね」
「……はぁ?」
 呆れた声とともに同じく呆れた顔が振り返る。
「なんだ急に」
 恋はじっと焔李を見つめ、一度ため息をつき焔李から目を離した。
「ほら、よく言うでしょ。悪いことやってる人の血はおいしくないって」
「なんだそりゃ。どこかの空想物語か」
「いやいやいるんですよそう言う人って本当に。微雅の外では結構うわさになってたり」
「何が」
「焔李の血おいしそうって」
「お前もだろ」
「そういううわさもあるけどね。迷惑極まりない」
 恋は先程切ったばかりの者の死体を眺め、その返り血のついた手を軽くなめた。
「馬鹿、腹壊すだろ」
 そう言うと、焔李は血の滲んだ自分の唇を舌で一撫でする。

 諸々の死体の上で交わされる会話は、酷く現実味があった。