会議室前にて
大きな扉を開き、気難しい空気の部屋を焔李は後にする。
下官が扉を閉めるのを確認すると、あからさまに嫌そうな顔をして背中を伸ばした。
「あっ仇珪様お仕事お疲れ様です」
「お疲れのようですね、少し休憩しますか」
中級官位の男女が焔李に歩み寄る。
「おう。……奴ら頭かたいからいちいち疲れんだよ」
うんざりした風に焔李は笑い肩をすくめた。
焔李は高級官位――いや最高級官位と言うべきか――で、微雅の者がなれる、微雅を動かす官位としては最高の最澄と呼ばれる者たちを相手に問題を指摘したり最澄の監視をする仕事についている。
最澄は三人おり、それに対して一人で相手をするので相当の実力と信頼を受ける者が代々就いている。
それに対し最澄は実力、それも文官としての実力が秀でた者が選ばれ、信頼出来るかについてはある程度以上なら目を塞ぐ。
その分の信頼が焔李の就いている任、澄越に注がれるのは言うまでも無い。
今も焔李は澄越として最澄に問題を指摘して議論してきたところだ。
焔李にはこれから、最澄の証言が信頼出来るものかあらゆる方面から詳細に調べるという作業が待っている。
「仇珪様がんばってくださーい」
二人の官は妙に気安く焔李に声をかける。
焔李は下からの受けが非常に良い。
高級官位にも関わらず気取っていない、話しやすい、下官に話し掛ける事がしばしばある、というのがだいたいの理由だ。
もちろん、それは尊敬や信頼という形であらわれる。
それにしても気安い二人は焔李直属の部下。
共に仕事をして、時には危険にも足を踏み入れる。
今このように気安い態度だが、仕事となれば一瞬にしてその表情を変える。
三人は、最澄が動く気配を感じるとそろって澄越執務室へと向かった。