下人の日常

 早朝、微雅の朝食を配るという一日の最初の仕事を終えた樟静は一人部屋で朝食をとっていた。
 そこへパタパタと二人分の足音が近づいてくる。
「「おはようございます圭さん」」
「おはようございます、晋意さんに留意さん」
 軽く挨拶をかわし二人は樟静の前に座った。
「お二人とも、今日はやけにお早いんですね」
 そうでしょ、と留意が身を乗り出して答える。
「ね、聞いて下さい圭。晋意ってば四時にいきなり叫びだして、突然起こされたんですよ」
「結果的に寝坊せずにすんだからいいと思いますけどね、俺は」
「晋意が言わないで下さい」
 口論する二人に樟静は笑いかけ、静かにお茶を用意した。
「では、お二人とも食事はもう済まされたんですね」
「「はい」」
「ではゆっくりしていってください。今まだ六時になったばかりです。お仕事まで時間があるのでしょう?」
 二人ははっとしたように動きを止める。
「そういえばいつもなら今の時間走り回ってる頃だよね」
「だからつまり俺の手柄?」
「いや、違うと思う」
 樟静はゆっくりと口を挟む。
「今日のご予定は?」
「「午後三時から六時までは空いてます」」
「私もその時間は空いているので、一緒に休みませんか?」
 二人が顔を見合わせる。
 樟静はにこりと笑って続ける。
「お互い予定を知っていれば気兼ねせずお話できるので」
 二人はまた顔を見合わせてにこりと笑った。
「「そうですね」」

「官位の―様ってお優しいよねー」
「―様もだけど―様もお優しかったですよ。昨日廊下ですれ違ったんです」
「えっ羨ましいです」
「お優しいと言えば、朱臣がよくお会いしている涼卦様もですよね」
「恋さんは兄のようにお慕いしているようですね」

「書室の整理って結構大変ですね。昨日初めてしました」
「結構なんてもんじゃないですよ、前棚し押しつぶされそうになったことがあります」
「書室で暴れてたんじゃないんですか留意」
「もう、そんなことないですよ」

「―さんがお菓子を分けてくださったんですよ」
「すごいですね。今度ぜひ作り方を教えていただきましょう」
「皆で作りましょうね」
「微雅はこれを食べる事が出来ないなんてかわいそうですね」
「ふふ、下人の特権です。微雅の方は強く、下人は優しくなればいいんですよ」
「微雅の方も、いえ微雅の方こそ優しさは身に付けていただきたいですけどね」

今日も下人の住まう一帯から楽しそうな笑い声が聞こえる。