in恋

 誰か助けて
 誰でもいいから
 私に気づいてよ

 こんなに心が苦しいのに
 身体も
 壊れそうなほどに痛いのに
 また
 私を傷つけるの?

「あなたならきっと大丈夫ですよ」

 どうしてそんなこというの
 私はそんな
 強くなんかない

 誰か助けて
 何もしなくていいから
 ただ私に気づいて


 いつものように鍛錬場を後にして
 部屋へ戻ろうと縁側を歩いていると
 曲がり角のところで突然身体に衝撃が加わった
 誰かとぶつかってしまったらしい
「ごめんなさい」
 謝って顔を上げると
 差し出される手
「いや俺も悪かったし……疲れてたんだろ」
 目の前にいたのは一人の男の子
 手には今の私達には難しそうな本がもたれている
 手をとって立ち上がると
 真っ直ぐに私を見る視線に気づいた
「ありがと」
 そのまま行こうとすると、突然手を引きとめられる
「……なに?」
「今からなにかあるのか?」
「別に、何もないよ」
「それじゃあ、ちょっと付き合ってくれないか?」
 突然の誘いに困惑してしまう
 それに、どうして私なんかを
 その疑問が伝わったのか
「他の奴じゃ話があわねぇから」
 しばらく迷ったけれど
 彼について行く事にした

 彼は本当に幼い頃から一人で修練していて
 後に歳長となる

「啓魄、あんまり無理しちゃだめだよ。また鍛錬場行ってたでしょ」
「それは恋も、いや恋にこそいってやりたい言葉だな」

 苦しい
 苦しい
 でも
 見ていてくれる人がいるから
 また頑張れる