そんな気遣い
「何を?」
「・・・は?」
恋が問い掛けると抄基は呆れたような顔で恋の方に向いた。
恋はそれが気に入らなかったようで、不機嫌そうにため息をついた。
「だから〜さっき何か言わなかった?」
「俺は何もいってない。」
「じゃあなんだったんだろ。」
「さぁ、気のせいだろ。」
「そうかな・・・別にいいけど。」
恋がそういうと、抄基はまた読んでいた本に視線を戻した。
外からは十二歳の元気な掛け声が聞こえてくる。
本当は恋も外に出たいのだが、先日戦で負った傷が治っていないため樟静に止められていた。
恋が外に出られないのを気遣ってか抄基が朝儀後すぐにきたが
このようにただ黙って本を読まれていたのではいづらくて仕方が無い。
恋がもう一度ため息をつくと、それに気づいてか抄基はパタンと本を閉じて恋の隣に座った。
「・・・何?」
「暇なんだろ。何か話すか?」
「暇じゃないよ。ちゃんと勉強してるでしょ。」
「さっきから手が止まってる。章の表紙ばかり見て何を勉強してるんだ?」
言われて恋はようやく自分が丁度章の切り替わりのところをずっと見ていたことに気づいた。
恋がむすっとして黙り込むが、抄基は気にする風でもなく話し始めた。
一時間後、戦での怪我を気にして少し曇っていた恋の心は完全に晴れ渡った。